2012年6月15日金曜日

スケルトン定借事業の実例(宇多野CH:5)



宇多野コーポラティブハウスは、長期優良先導的モデル事業に採択されました。

京都宇多野コーポラティブハウスは、スケルトン定借と木造テラスハウスを組み合わせる事により、我国独自の持続可能性を持った集合住宅のモデルと、それを実現する仕組みを提案しています。


基本的な考え方

京都は1200年以上の歴史をもつまちです。

京町家の瓦屋根のつらなり、神社仏閣の木々の緑、東西北三方の山の稜線など、これらが京都の落ち着いたまちなみを形成しています。

建物はまちなみを構成する重要なピースといえます。


しかし、都心部の地価は高く、経済至上主義の開発では中高層マンションになりやすく、これは京都のまちなみに調和せず、これまでも数々の景観論争を起こしてきました。
また、マンションの区分所有には、その持続可能性に疑問が投げかけられています。






近年、京都では景観法に基づく景観計画も策定され、まちなみ・景観に対する意識はますます高まっています。
まちなみに調和しつつ、建物(個々のピース)は時代にあわせて維持管理、機能・性能の向上をはかることができ、良好なまちなみを次世代に継承し、持続可能な住宅が期待されています。
本事業は、そのための住宅モデルとそれを実現する仕組みを提案します。




「京都方式=木造テラスハウス×スケルトン定借」の提案

~まちなみに調和する低層の木造テラスハウスと定期借地のコラボレーション~

京都のまちなみに相応しい住宅モデルとして、低層の木造テラスハウス形式(現代の集合町家)を提案します。


この低層テラスハウスを都心部で実現する仕組みとして、定期借地権を採用します。
これは定期借地とすることで、土地に建物(床)を詰め込む必要がなくなり、地価の高い都心部でも低層住宅が実現しやすくなるためです。
また、定期借地による土地活用で「従前の緑を残したい」などの地主意向にも応えることができます。


長期に渡り住宅を良好に受け継ぐ仕組み -「スケルトン定借」の利用-

スケルトン定借は、スケルトン・インフィル(SI)方式の建物と、建物譲渡特約付き定期借地権を組み合わせて採用します。これによって、長期耐用性と可変性(時代にあったニーズ対応性)を両立します。



3035年は持家(土地は借地)ですが、3035年後の建物譲渡特約の行使により建物は地主に引き継がれます。
土地と建物の所有を一元化することにより、安定的な建物の維持管理へ繋げていきます。
建物譲渡特約の存在により、区分所有者に維持管理のインセンティブを付与します。
建物の維持管理状態が3035年後の買取価格に影響するためです。





テラスハウス形式による維持管理性の向上

-持続可能性を備えた現代の集合町家の実現-

町家は連続建てのようにみえますが、個々に独立した構造です。
まちなみの連続性と個々の独立性(維持管理、更新の容易性を確保)を兼ね備えています。
この事が、京都のまちが、個別更新を繰り返しながら、世界最高レベルの人口密度の都市として1200年以上もの長期にわたって持続し続けてきた要因の一つと考えられます。

本提案のテラスハウス形式では、戸境壁の二重(ダブルウォール)化により、構造的独立性が保たれるので、区分所有建物でありながら、個別の維持管理や構造部材のやりかえ(更新)も容易としています。



京都宇多野コーポラティブハウスの概要


京都宇多野コーポラティブハウスの敷地は、仁和寺に近い、閑静な住宅地に位置しますが、典型的な旗竿形状の敷地で、4mに満たない接道で竿部分が約35mにも及ぶ、起伏に富んだ420坪もの敷地でした。この敷地に、上記コンセプトを踏まえて、以下のような計画を行ないました。



<京都方式(木造テラスハウス×スケルトン定借)の採用>



 ・京都の都心部に低層の集合町家(現代版町家)を実現




<一団地申請による建物の分棟化>


・従前の地形を活かした分棟化

・既存樹木をできるだけ活かした計画




<まちなみ景観の継承の工夫>


 ・伝統的デザインコードの導入

 ・低層接地型で分棟化(建物ボリュームを抑えた計画)



<将来の維持管理・更新、規模可変の工夫>


・分譲住戸はダブルウォールで構造的に独立性を担保


・構造的独立性とSI方式を活かした維持管理、更新計画(管理規約等での位置づけを検討)


・賃貸住戸は将来の2戸1化を想定した非構造壁(戸境壁)


<コーポラティブ方式の採用>


・同じ目標(京都のまちに相応しい住宅の実現、まちなみ景観の維持)を持った人の集まり


・入居前からのコミュニティ形成-維持管理、合意形成、セキュリティにも大きく寄与


<定借(地主)を介した地元との関係構築>


 ・地主を介した地元コミュニティへの溶け込み、融和


・ 地主とともにまちなみ景観の継承努力




 

   京都は1200年以上に渡り、都市であり続けてきました。
   京都のまちは1200年以上もの間、持続可能性を保ち続けてきた都市構造の到達点を表しているといえます。
   近年の分譲マンションの増加は、従前のまちなみとは異なる中高層化に対する地域住民の反発を生むだけでなく、持続可能性に課題を持つ分譲マンションが、将来老朽化に伴い都市の活力を失わせる原因になりかねない問題が指摘されています。
   京都方式により、京都に相応しい、まちなみ継承に寄与する住宅モデルと、それを実現・維持していくシステムを提案、普及させていきたいと思います。


スケルトン定借住宅を中心とした新しい住宅によるまちづくりを支援していくことを目的として、1998年7月6日に「スケルトン定借普及センター」が設立されています。
http://www.skeleton.gr.jp/


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