2012年6月11日月曜日

スケルトン定借事業の実例(宇多野CH:1)

2010年に宇多野コーポラティブハウスが完成した際に、事業概要と事業内容を紹介するセミナーを開催いたしました。その時の内容をご紹介いたします。

本事業の計画地は、仁和寺にほど近い宇多野福王子町に位置し、周辺は緑豊かな閑静な住宅地が広がっています。


およそ420坪程もある敷地は典型的な旗竿状敷地で、上の写真でも確認できるように、従前は一軒家として利用されていました。


ここに居住されていた先代が亡くなってから、相続権利者は遠方に住まれていたので、およそ10年近く放置されていて荒れ放題になっており、ジャングルのような状態になっていました。





この敷地で計画する上では、さまざまな障害があり、大きく4つの問題がありました。

①つ目は、接道条件が非常に厳しいということです。
西側の周山街道側の法面は道路敷ですが、崖で行き来ができない為、非接道とされました。
また、東側の宇多野径58号線側は「袋小路状の通路」で、長さ36m、幅員3.6mと京都市の規定「長さ35m以下、幅員4m以上」を満たしておりません。
現状のままでは従前住宅と同用途・同規模の建物しか建てられない状況でした。

②つ目は、敷地内に高低差があったことです。
従前のお屋敷の南側が庭として利用されていたこともあり、その間約2m程度の高低差があり、さらに西北に緩やかに地盤が下がり、敷地内の地盤で最も低いところと高いところは約6m程度の高低差がある状況でした。接道状況より開発許可を前提とした計画は不可能で、現況地盤面を生かした計画にする必要がありました。しかし、敷地内高低差が大きく、敷地全体を活用するには分棟化の必要がありました。しかし、京都市では近年一団地申請を認めておらず、前例がほとんど無い状況でした。

③つ目は、風致地区・景観条例の対象地にあり、厳しい規制の対象となっておりました。
まず、厳しい高さ制限がかけられており、周山街道沿いでMax15m、他はMax10mの制限がありました。さらに、隣り合う外壁角度は直角でなければならないという規制もありました。ただし、これに関しては、別棟間の角度であれば、他に定めるところは無いようでした。

④つ目は、さらに建設可能範囲が限定されていました。
周山街道側の法面が崖地につき、建物は道路から崖の高さの2倍の水平距離まで後退しなければなりません。ところが、道路敷の法面は「国有地」なので勝手に手を加えることが出来ない状況でした。


これらの問題を解消する為に、京都市と協議の結果、次のように対処しました。

①厳しい接道条件に対しては、周山街道側に人が出入りできる状態をつくり、その幅が2m以上であれば接道として認めるという判断を導き出しました。この判断を導き出すのに伴い、敷地内に遊歩道を設置し、サブ動線を確保しました。

②敷地内高低差に対処する方法として、京都市では近年ほとんど認めていなかった、一団地申請の認可を受けました。京都市が本計画に対して一団地申請を認めた理由としては、定期借地権による将来担保が得られる計画であったこと、良好な土地活用計画であったこと、周辺街並みとの共生が評価されたようです。

③風致地区・景観条例に対しては、一団地申請による分棟化を図り、敷地全体を活用し、建築確認上4棟の申請を行うことでクリアしました。

④建設可能範囲が限定されている事に対しては、基礎を安息角まで根入れすることで、敷地全体を活用、他人地に影響を及ぼさずに計画でき、RC造による地下階を設置するなどの対応で対処しました。



スケルトン定借住宅を中心とした新しい住宅によるまちづくりを支援していくことを目的として、1998年7月6日に「スケルトン定借普及センター」が設立されています。
http://www.skeleton.gr.jp/







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