2012年5月21日月曜日

コーポラティブハウスはなぜ普及しないのか?

このように、メリットの多いコーポラティブハウスですが、1970年代から日本でも建ち始めたものの、まだ一部の方にしか知られておらず、一般にはほとんど普及していません。
それには、当然メリットに付随するデメリットが影響しています。
コーポラティブハウスが語られるとき、そのデメリットとして
①すぐには入居できない
②打ち合わせが必要
③価格変動の可能性
が上げられます。
しかし、初期の設計段階から事業に関与して、設計内容に希望を反映させるわけですから①の理由は本質的理由ではありません。②も設計に関しては同様です。
③に関しては、事業スタート時点から、コーディネーターがきっちりと収支コントロールを行えばクリアできる問題です。

では、本当に普及しない理由は何か?
最大の理由は、事業者主体の商品であっても売れるので、多様なニーズに応えるような面倒な事をしないほうが、マンションディベロッパー等事業者にとって高い収益性が得られたからです。

しかし、既に日本の住宅ストックは世帯数を上回り、単に量としての住宅は既に充足しています。

将来に向けて多様なニーズに応える為に、コーポラティブハウスに取り組もうとした事業者は、今までにもありました。
しかし、コーポラティブハウスに事業として取り組むことは非常に難しく、簡単に取り組むことができないと言われてきました。
何が難しいかと言うと、コーポラティブハウスは参加者間の議論を通じた合意形成を前提とした進捗を基本としており、この合意形成を得る事が難しいとされてきたのです。


コーポラティブハウスは、建設組合集会で議論を重ねることを通じて、各住民どうしが仲よくなると紹介されることがあります。
本当に、集会で議論を重ねると他人と仲よくなるのでしょうか?

今までのコーポラティブハウスでは、度重なる討議が必要とされてきました。
一般的に数十回も討議が繰り返されてきたと聞きます。
こうなると、時間が自由になる人でないと参加できなくなります。
また、討議の場で、1から10まで議論して物事を決めていかなければならないとなると、非常に参加者の負担が大きくなります。
討議に参加するためには、個々で勉強もしなければなりません。
また、直接面と向き合って討議を行うと、声の大きい自分勝手な人の意見に振り回されます。
そして、良いアイデアを持っていても、人前で発言することを躊躇する方の案は反映されません。
意見対立が生じた場合、合理的に解決されずに、根気強い人の意見が通るようになります。
意見が通った人は自分の意見が正しかったと感じるため、次に意見対立が生じた場合には、より強く自分の意見を通そうとします。
こうなると、お互いに一切妥協することができなくなっていきます。
主観の対立はエスカレートするばかりで、なかなかまとまりません。
そして、結局、仲が良くなるどころか、修復不可能な程、人間関係に溝をつくってしまう事も起こり得ます。
こうなってしまっては、夢の住まいが、台無しです。
合意形成に時間がかかると、結果としてスケジュールやコストも大きく変動します。

このように、合意形成の困難さというデメリットが、コーポラティブハウスの持つメリットを相殺してしまい、コーポラティブハウスの良さが生かされてきませんでした。

しかし、これは、コーポラティブハウスの持っている本質的問題ではなく、やり方の問題である事に私達は気づきました。


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